研究概要 |
遍歴と局在の2重性は強相関電子系の持つ本質的な問題である。本研究では2重性を本質的に内在するウラン化合物を研究対象に選び、典型的なウラン化合物を開発するとともに2重性が関与する物性現象を明らかにすることを目的とした。 局在的性質を顕著に示す新しいウラン化合物U_3Pd_<20>Si_6の発見した。その純良単結晶の育成にも成功し、その輸送現象、熱物性、磁性についての詳細な測定を行った。また、比較のために典型的な局在系であるR_3(=La, Pr, Ce、Nd)Pd_<20>Ge_6についても、純良単結晶を育成し、物性や電子構造の測定を行った。 電気抵抗、比熱、帯磁率の測定から19Kおよび2Kに磁気転移点が発見され、これらはそれぞれ、反強磁性転移および強磁性転移に対応することがわかった。U_3Pd_<20>Si_6の磁気モーメントの大きさはUあたり3.30μ_Bと大きく、また、19KまでにUあたりほぼRIn3のエントロピーが放出されることがわかった。これらの結果はUの5f電子が局在していることを強く示唆している結果である。また、中性子非弾性散乱の予備実験を開始しており、結晶場励起が存在することを示す結果を得ている。これまで、U化合物で金属的な伝導を示し、かつ、5f電子が局在していることが明らかにされた例は極めてわずかであり、局在5f電子系の示す物性の理解に重要な貢献をすると考える。 また、他の典型的なU化合物(UPd_2Al_3,UNi_2Al_3,U_2Rh_3Si_5)についても研究を行いその局在・遍歴に由来する電子構造、物性を明らかにした。
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