研究概要 |
超伝導体/強磁性体超格子は、それぞれの物質が空間的に隔たった構造をしている。このため2つの相反する秩序が共存することができ、各層の厚さを変化させることにより、超伝導・磁性の特性をも制御できる興味深い物質である。磁性層の厚さを増加させると、隣り合う超伝導層間のオーダー・パラメータの位相差が0である状態からπである状態に変化し、超伝導臨界温度が非単調な振る舞いをすることが理論的にも実験的にも示され、非磁性超格子では見られない、この超格子系に特有の現象として知られている。 これまでの理論計算では、交換エネルギーは臨界温度より十分大きいと仮定しているが、これを満たさない実験がある。したがって、この条件を除き、超伝導層はBCS結合、磁性層は交換エネルギーがあり、拡散係数・状態密度は各層で変化できるものとして、数値計算を行い、最近の超伝導臨界温度の実験結果と比較し、定性的・定量的な一致を得た。さらに、まだ実験がなされていない上部臨界磁場についての結果を示した。(Phys.Rev.B57(1998),6022) オーダー・パラメータの空間分布は超格子と同じ周期を持ち、Blochの定理を満たさなければならない。上記物理量を求めるためには、高次の固有値・固有関数まで考慮する必要があり、この計算を有限要素法を用いることで可能とし、より正確なオーダー・パラメータの空間分布を得た。臨界温度の磁性層の厚さ依存性が非単調になることは直感的に理解することは難しが、磁性層は固有値を変化させる効果、異なる状態間の結合を変化させる効果があるためであることが分かった。
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