研究概要 |
本年度の研究の主な結果を以下に記す。 1.軌道縮退系Ce_xLa_<1-x>B_6において,x〜0.75で現れる奇妙な相(IV相)の秩序パラメータはまだ同定されていない。我々は,これを八重極の秩序とする仮説を立て,実験的に観測されている顕著な弾性異常を説明した。すなわち,八重極の秩序があると,四重極揺らぎと反強磁性の揺らぎが混合し,弾性率のソフト化の原因は,後者の揺らぎが温度の降下と共に育つことにある,と議論した。. 2.揺らぎの効果を予断なく考慮するために,軌道縮退をSU(4)対称性に単純化したモデルを取った。高温展開法により,1次元系から3次元系にわたってこのモデルの熱力学的諸量を導出した。1次元におけるエントロピーは外挿法を工夫することにより,全温度領域で正確に求められた。多次元系においては,比熱のピークを与える有限の温度が存在することを示した。 3.f^2状態においては局在した単重項状態が可能であり,混成の増加により遍歴した状態に連続的に変化すると考えられる。我々は,結晶場単重項基底状態と三重項励起状態が存在する場合には,軌道縮退と近藤効果の競合により,電子対が形成されるとする新機構を提案した。この電子対の波動関数は,軌道の交換に対して対称,スピンについては反対称である。逆に結晶場三重項が基底状態の場合には,スピン三重項の電子対が形成される。
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