研究概要 |
2重交換相互作用に媒介された金属強磁性を示すMn酸化物は、ホールをドープすることにより、ホール濃度30%あたりで反強磁性絶縁体から強磁性金属へと金属・絶縁体転移を示し、転移の近傍で異常に大きな磁気抵抗を示す。この金属・絶縁体転移には同時に軌道秩序を伴う事が多く、系の磁性に非常に大きなインパクトを生じさせ、ひいては系の輪送現象に対しても大きな変化を生じる。我々の研究は中性子散乱を用いて、50%近傍のMn酸化物系試料を主体として実験を進め、50%近傍のMn酸化物系の金属・絶縁体転移におけるスピン揺動の特徴を非弾性散乱実験により明らかにすることである。平成10年度は、Nd_<0.45>Sr_<0.55>MnO_3,Pr_<1-X>Ca_XMnO_3などの系でスピンダイナミクスを調べ、スピン揺動が反強磁性金属相でも軌道秩序形成のために非常に異方的になっていることを明らかにした。また広いホール濃度範囲においてホールをドープされたMn酸化物では、常磁性相においてスピン揺動は、二重交換相互作用の支配を受けるために強磁性的になっていることを示した。
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