Mn酸化物の振舞いを典型的に反映する3次元系のNd_<1-x>Sr_xMnO_3と2次元系のLa_<2-2x>Sr_<1+2x>Mn_2O_7においてホール濃度による結晶構造と磁気構造の変化を決定して相図を作成することが出来た。また常磁性相のスピンダイナミクスを測定することにより、スピン揺らぎが強磁性相関から電荷秩序が形成されると反強磁性相関へと変化していることを見いだした。さらにCE型電荷秩序相においては磁気秩序は真の長距離秩序ではないことを発見した。これはCE型磁気・電荷秩序が軌道秩序を伴うため、軌道のドメインが同時に磁気ドメインを形成させてスピン・スピン相関距離を有限に抑制するためである。一方、強磁性相でも軌道秩序の形成が非常に重要であり、スピンダイナミクスの研究から、軌道秩序の形成によりスピン相関のエネルギーが異方的になっていることや、強磁性相でありながら低温相のA型反強磁性相の特徴を共有するスピン相関を既に示している場合があることなどが明らかにされた。 2次元系で巨大磁気抵抗を示す2次元層状Mn酸化物La_<2-2x>Sr_<1+2x>Mn_2O_7系の研究では、顕著な巨大磁気抵抗を示すx=0.40の近傍でホール濃度0.30<x<0.50の範囲で磁気相図を作成しスピンダイナミクスを測定した。この物質では、x>0.40以上で中間温度にA型反強磁性相が存在することを指摘し、高温で観測されていた帯磁率の異常の原因を明らかにした。2重交換相互作用を考慮すれば、A型反強磁性相では金属的な電気抵抗の振舞いを示すことが期待されるが、この系では強磁性成分が出現するまで絶縁体的であり、その原因は奇妙な擬ストライプ秩序とも言える相関距離の極短い電荷秩序が存在することであることを明らかにした。
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