本研究の目的は、t-Jモデルにおける磁束状態の特異なふるまいや、パラメータ依存性を調べて、実験と比較できるような理論を構成しようという点である。この目的を達成するために、まず平成10年度で数値的な計算のためのプログラムの開発を行ない、得られた結果を論文としてまとめつつある。以下具体的に整理する。 1. 強相関を扱うための近似方法の開発のために、一様な状態に対する変分モンテカルロ法を、反強磁性のオーダーパラメータを含む場合まで拡張した。 2. 以上の数値的な結果を磁束の場合に用いるためには、解析的な近似方法との関連を明らかにし、Bogoliubov-de Gennes方程式に適用できる形にしておく必要がある。そのために今までの近似方法を改良して、数値計算の結果の定性的な理解を得た。 3. 磁束の場合と密接な関係のある、t-Jモデルの表面付近での状態、および不純物近傍での状態を調べた。このためにBogoliubov-de Gennes方程式を数値的に解くプログラムを改良し、かなり大きなサイズでの計算を可能にした。その結果を解析してまとめた。 4. 反強磁性とd波超伝導との関係について、ストライプ状態と関連して議論した。
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