1.超音波測定装置の作製 本年度4月より、研究代表者の松本が東京工業大学より金沢大学に転任した。前年度作成した超音波測定装置は、本研究費の備品費より購入した超音波レシーバを用い、精密な音速測定を可能にする直交検波を行うことができるようになっていたが、超音波パルス発生装置には東京工業大学の備品を利用していたため、金沢大学において新しい測定装置を構築しなくてはならなかった。本年度の研究費によって、測定装置の製作が行われ、ほぼ実験が行える体制を整備することができた。 2.エアロジェルーヘリウム4複合系の音波モードと音速の密度依存性 本年度はこれらの超音波測定装置の性能評価とエアロジェル中の音波の伝播の概要を理解するために、液体ヘリウム4中に実際に合成したエアロジェルを浸し、10MHzの周波数において超音波測定の実験を行った。 その結果、エアロジェル中の液体ヘリウムを伝播する超音波はエアロジェルによる散乱によりかなり大きな減衰を示すことが明らかになった。重要な発見として、音波の伝播速度がエアロジェルの密度に大きく依存することが観測された。エアロジェル自身の音速は固体としてはきわめて遅く、その密度を変化させることで液体ヘリウムの音速より遅い音速を示すものも製作できる。このような系では両者が結合した音波のモードの存在が予想され、我々の実験では音波モードのうち早い音速を持つモードの観測に超流動と常流動の両相で成功した。この観測は初めて行われたものである。特に、音速をエアロジェルにより制御する可能性を示したことは重要である。 本年度の研究の成果はPhysicaBに投稿され掲載許可がでている。今後、液体ヘリウム3での実験に進む予定である。
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