研究課題/領域番号 |
10640336
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
浅井 吉蔵 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (00109795)
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研究分担者 |
近 桂一郎 早稲田大学, 理工学部, 教授 (40063656)
小林 義彦 電気通信大学, 電気通信学部, 助手 (60293122)
鈴木 勝 電気通信大学, 電気通信学部, 助教授 (20196869)
山田 修義 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (40017405)
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キーワード | スピン転移 / スピンと格子の結合 / 電子輸送現象 / モット転移 / 強相関電子系 / 弾性異常 |
研究概要 |
モット転移近傍物質の諸物性にはスピン-電荷-格子の自由度の結合が重要な役割をはたす。本研究はこれら3者の相互作用を明らかにすることを目的として、モット転移近傍物質でスピン転移をおこす物質の1つであるLaCoO_3とそれと同じくCo^<3+>のみを含むが層状の結晶構造をもつLaSrCoO_2等の物質を電子物性と格子の両面から調べている。本年度はLaCoO_3について、1)スピン転移に伴う弾性異常、2)スピン転移と電子輸送現象に対する元素置換の効果を研究した。1)では、スピン転移を起こす100Kと500Kの両温度領域で音速異常(softening)が起こり、且つ100K領域で超音波吸収が顕著に増大することを10MHzでの超音波測定により明らかにした。実験結果は、スピン転移に伴う格子の異常熱膨張測定から得られていた各スピン状態のエネルギーの体積依存性を定量的に支持する。しかし、測定周波数をかえた超音波測定を行ったところ、スピン転移に伴う音速異常が周波数分散を持つという実験結果が得られつつあり、スピン・格子結合系の動的振る舞いの理解は今後の課題である。2)では、CoをNiで数%置換した系でもLaをSrで置換した場合と同様に100K領域のスピン転移が消失し、低温で強磁性的相関をもつスピングラス相が出現することを明らかにした。熱電能の測定から、両置換とも伝導に寄与する主たる電荷の符号は正であることが明らかになったが、ホール係数の符号はSr置換の場合が正.Ni置換の場合は負であることが判明した。LaSrCoO_4では、常磁性帯磁率と電子の輸送現象に顕著な異方性のあることが既に報告されているが、より詳しい知見を得るには、中性子散乱実験が可能なサイズの良質の単結晶の作製が最重要であると考える。本研究では赤外線集中加熱炉による単結晶作製を試みた。原料多結晶試料の作製に共沈を用いる等の工夫を重ねつつあるが、溶融帯の不安定性等のために未だ目的とするサイズの単結晶を得るにはいたっていない。
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