研究概要 |
ソル・ゲル法を用いて高温超伝導体R_2Ba_4Cu_7O_<15-δ>(R=Dy,Er)のシングルフェイズ試料を作製した.低温比熱による系統的な測定を行ない,超伝導状態と共存する希土類イオンの長距離および短距離磁気相互作用の研究を酸素濃度δを変えて行なった. Er247の試料ではδ=0.08に対しT_N=0.54K,δ=0.90に対しT_N=0.51Kと酵素濃度を変えてもネール温度に対応した比熱のピークはほとんど変わらなかった.しかしT_N近傍での比熱の異常の形は酵素濃度に強く依存した.酵素が高濃度側のδ=0.08と低濃度側のδ=0.90では典型的な長距離磁気秩序に対応したシャープな比熱の異常を見出した.これらの結果は異方的な2次元イジングモデルでよく再現できる.面内での異方性の強さは|J2/J1|〜1/4と見積もられた.一方,酵素濃度が中間領域のδ=0.70では,比熱の絶対値が減少し,T_Nに対応した異常はブロードになった.これは,T_Nより高温側で短距離磁気相関が発達していることを示唆している.2次元イジングモデルでは非常に大きな異方性|J2/J1|〜1/400によって比熱を定性的に説明する.これはほとんど1次元のイジングチェインと見なすことができる.Er^<3+>の1次元のイジングチェインと2次元のイジングクラスターとからなるモデルのよってより良く比熱の実験結果を再現することができた. Dy247の試料における比熱の異常は酵素濃度を変えてもT_N=1.0Kからほとんど変わらず中間濃度のDy_2Ba_4Cu_7O_<14.45>でもシャープな異常を示し,上述した効果はDy247の系では観測されなかった.これはCuO_2面内における電子のディスオーダーが何らかの変換相互作用のディスオーダーを引き起こしていると考えられる.
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