研究概要 |
セリウムやウランなど局在f電子をもつ不純物を含む系において強相関効果を研究してきた.研究手法はM個のチャンネルに対応する補助粒子(スレーブボゾン),軌道-スピン自由度を表す擬フェルミオンを導入し1/N展開法を適用した。得られた結果を以下に述べる. (1)アンダーソン格子模型 単チャンネルの場合,1/Nの0次で減衰の無い重い電子を記述できる.1次でも,フェルミ液体的な減衰以外は多数項の相殺により生じない.更に2次まで計算した.この場合,18のダイアグラムの相殺により減衰は生じなかった.また,この系ではラッティンジャー総和則が満たされており,フェルミ液体となっている. 多チャンネルの場合、1/Nの1次で格子を作っているため生ずるインターサイト項を取り入れると、定数項は打ち消し合い,温度に比例する減衰がのみが現れ,この系が並進対称性を満たしていることを反映した計算になっていること示した.これらの結果を纏めて刊行した. (2)2チャンネルアンダーソン格子模型をURu2Si2の微少磁気能率の研究に適用した.最近の実験結果により,2重極がオーダーする相が核磁気緩和実験により発見され,4重極がオーダーする相と共存することが分かった.この実験結果に基づき,研究を進展させた.具体的には,17.5Kでの相転移は4重極オーダーであるとしてその大きさを計算した.次にそのオーダーの下での2重極の揺らぎの誘起による準ブラッグピークを計算し,中性子による磁気モーメントの観測値の検討を行い,実験と整合性をもつ結果を得た.更に,2重極がオーダーする相の計算を行い,磁気モーメントの計算が実験と整合性をもつこと示した.これらの研究により,URu2Si2の微少磁気能率は大筋で理解出来たと思われる.
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