研究概要 |
セリウムやウランなど局在f電子をもつ系および銅など遷移元素の局在3d電子をもつ系を、強相関電子系の観点から研究してきた.研究手法はM個のチャンネルに対応する補助粒子(スレーブボゾン),軌道ースピン自由度(N)を表す擬フェルミオンを導入し1/N展開法を適用した. (1)単チャンネルのアンダーソン格子模型に適用した場合には,1/Nの0次で減衰の無い重い電子を記述できる.1次でも,フェルミ液体的な減衰以外は多数項の相殺により生じない.また,この系ではラッティンジャー総和が満たされており,フェルミ液体となっている.この重い電子状態を用いて,Ce(Ru1-xRhx)Si2(0.03<x<0.35)に現れる,近藤温度(Tk}=20K)より低温の重い電子状態,ネール温度以下の非整合スピン密度波(SDW)への移行およびそれに伴うインバー効果を研究した.ネール温度のx-依存性は,実験と定性的に一致する結果を得た.また,重い電子の間に働く局所相互作用の体積依存性を理論に取り入れると実験で観測されているインバー効果を説明できる. (2)2チャンネルアンダーソン格子模型をURu2Si_2の微少磁気能率の研究に適用した.17.5Kでの相転移は4重極オーダーであるとしてその大きさを計算した.次にそのオーダーの下での2重極の揺らぎの誘起による準ブラッグピークを計算し,中性子による磁気モーメントの観測値の検討を行った.更に,2重極がオーダーする相での磁気モーメントの計算を行った.これらの結果を最近の核磁気緩和の実験を比べると,大筋で一致することがわかった.
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