研究概要 |
銅酸化物高温超伝導体の低ドープ領域で見られる擬ギャップ状態は強結合超伝導の観点から注目されている。この問題解決に向け、理論的な検討を行ってきた. 1) 強結合の領域で転移温度Tcより高温でフェルミ液体状態が不安定になり擬ギャップ状態が実現することが明らかになった. 2) 転移温度近くで正しい時間に依存したGinzburg-Landauの展開を行い.自己無撞着に展開係数を決定すると、現実の実験に近いスペクトルを再現できることがわかった. 3) 以上はd波の引力を仮定したが、その仮定なしに斥力のクーロン相互作用から,出発し、スピンの揺らぎを用いて超伝導や擬ギャップを生じる解が存在することが示された.以上の結果から銅酸化物高温超伝導体で見られる擬ギャップは高温超伝導の前兆であり、低ドープ域では有効フェルミエネルギーが小さいことから、ボーズ凝縮が低温度で起こって初めて超伝導が実現する結果として理解できることが確立した.有機導体の擬ギャップについても同様の理解が可能であることを、3次元から2次元へ移行する計算によって.示した.2次元で超伝導揺らぎが強いことが擬ギャップの出現にとって不可欠であることがわかった.公開の研究会を開き実験家など60名の参加を得て活発な議論を行い、研究の方向を確認した.
|