本研究では近藤効果に代表される局所的電子相関効果がもたらす諸物性を研究することを目的としている。本年度は、主に以下の三つのテーマに関する研究を行った。 1.磁性不純物を希薄に含む乱れた2次元電子系の帯磁率を量子モンテカルロ法により調べた結果、温度低下に従い有効キュリー定数は、乱れがある場合の方が強い温度依存性で減少した。この結果は以前、弱局在領域で摂動展開により得られた結果と矛盾しない。温度が近藤温度以下まで低下すると、有効キュリー定数は不純物ポテンシャル配意によらずゼロに向かって収束した。この結果は、磁性不純物を希薄に含む乱れた2次元電子系の基底状態がシングレットであることを示唆している。 2.軌道縮退アンダーソンモデルの有限温度でのスピン、電荷励起スペクトルをベーテ仮説に基づく厳密解を用いて調べた。近藤領域、価数揺動領域での素励起スペクトルは、軌道縮退及び結晶場の影響を反映した近藤温度の違いにより、特徴的温度依存性を示すことが明らかになった。 3.これまでの研究から、ギャップを持つ(擬)1次元量子スピン系は磁場でギャップが閉じた場合、朝永・ラッティンジャー流体で記述されることが示されている。そこで2本足スピン梯子系、ハルデーンギャップ系、スピンパイエルス転移系などについて朝永・ラッティンジャー流体相でのNMR緩和率(1/T_1)を系統的に調べた結果、温度低下に伴う1/T_1の発散のべきの磁場依存性は系の違いを反映した特徴的振る舞いを示すことが明らかになった。
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