研究概要 |
1.磁性不純物を希薄に含む乱れた2次元電子系の帯磁率を量子モンテカルロ法により調べた。41×41サイトの2次元電子系のオンサイト上に[-W,W]の範囲でランダムポテンシャルを分布させ、まず、系の中心に位置する磁性不純物の帯磁率の温度依存性を計算した結果、有効キュリー定数は乱れの強さに依らず温度低下に従い減少し、ゼロに漸近した。すなわち、この場合の乱れたポテンシャル中での磁性不純物の局在スピンは伝導電子のスピンにより遮蔽された。次に、ランダムポテンシャルはそのままで磁性不純物の位置を移動させて同様の計算をした結果、乱れが強くなるに従い有効キュリー定数は低温において増加し、W>3.0では温度が低下しても減少を示さなかった。すなわち、この位置にある磁性不純物の局在スピンは伝導電子のスピンにより完全には遮蔽されなかった。近藤温度がT_K=(2πχ)^<-1>で与えられることから、以上の結果は、乱れたポテンシャル中では近藤温度が0から乱れがない場合の値まで、空間的に分布していることを表している。この結果は、以前UCu_<5-x>Pd_x等の系が低温で示す非フェルミ流体的性質を説明するために現象論的に導入されたモデルを、微視的立場から説明したものである。 2.次近接相互作用を持つS=1/2ボンド交替鎖は、飽和磁化の1/2に磁化プラトーを持つパラメータ領域が存在する。ここではランチョス法に基づく連分数展開を用いて、この系の磁化プラトー領域での動的構造因子を計算した。ボンド交替パラメータδが1に近く次近接相互作用αが0に近い場合、系はS=1/2XXZ鎖にマップされるが、α〜0.4でもδ〜1であれば動的構造因子の重みはS=1/2XXZ鎖の素励起のバンドの中に分布することが明らかになった。また、δが小さい場合動的構造因子の重みは波数がπ/2付近にあるが、δが大きくなるにつれ、その重みは波数がπ付近に移ることが明らかになった。
|