本研究の目的は、現行のFLAPW法の計算プログラムをLDA+U法に使える様に変更を加え、これを用いて一電子基歳状態において強いクーロン相互作用の効果が顕著に現れていると予想されているf電子化合物等の主に非磁性の四極子秩序状態や一重項基底状態にある系の電子構造を計算し、dHvA効果や光電子分光などの実験と詳細に比較することにより、クーロン相互作用の役割を明らかにすることにある。 3年間の研究において、スピン軌道相互作用がある場合にもLDA+U法を用いる事ができる様にLDA+U法を一般化された形式に拡張し、さらに密度行列を自己無撞着に計算できるようにプログラムに変更を加えた。実際に一重項基底状態を出発点としてPr金属、SmB_6、UPd_3、PrRu_4P_<12>などで計算を行った。また、CeRu_2Si_2、UAl_3、YbB_<12>などでは、非磁性状態にもかかわらず、f電子の電荷分布が大きな異方性を持った状態が安定な解として存在することを示した。また、PrPb_3の反強四重極秩序状態の予備計算を行い、本研究で新しく開発したLDA+U法が四重極秩序状態を記述できる事を示した。 一方でLDA+U法の効果を吟味するためにLDAの範囲内での研究も並行して行った。具体的にはCeIrIn_5、CeRhIn_5、CeCoIn_5、LaRu_4Sb_<12>等の化合物の電子状態とフェルミ面を求め、実験と詳細に比較した。これらの物質においてLDA+U法の果たす役割について考察を加えていく予定である。
|