圧力誘起超伝導体、CeRh2Si2の基底磁気構造と磁気揺らぎを、中性子散乱法を中心として調べるのが本研究の主題である。1998年度は、残念ながら、日本原子力研究所の3号炉の故障のため、予定していた実験は、磁場による、基底状態の安定性を見る実験しか実施できなかった。しかし、この間、97年度に得たデータを詳しく解析した結果、幾つか重要な事実が明らかになり、今後の研究にも貴重な指針が得られた。以下に要点を記す。 (1) 基底磁気構造として、三種類の独立な反強磁性ドメインの三次元的超格子の可能性を考えていたが、新たに4個の異なる波数の変調からなる4重変調構造である可能性があることが分かった。 (2) 磁場による、回折強度の変化を解析することにより、この基底状態は一個の相として熱平衡状態で存在することが分かった。 (3) 圧力によるネール点と副格子磁化の変化を解析した結果、この物質では磁性の消える近くでは、ネール点をほぼ一定の高い値に保ったまま副格子磁化が消滅していくことが分かった。このことは、金属的常磁性近藤格子での大きな課題となっている、微小磁気モーメントをもった磁気秩序の問題に対して重要なヒントをあたえるものである。これらの結果は、現在Phys.Rev.Bに投稿中。
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