圧力誘起超伝導体CeRh2Si2の基底磁気構造と、磁性の圧力に対する応答を調べるために、圧力下の中性子回折実験を精密化し、さらに関連物質Ce(Ru0.85Rh0.15)2Si2での圧力下回折実験を行った。その結果、CeRh2Si2の基底磁気構造は、4個の独立な磁気変調ベクトルが重畳することによって作られる4-q構造であること、圧力によって、この構造が消失すると同時に(他のもう一つの反強磁性相とは共存しながら)超伝導が出現すること、が明らかになった。さらに、反強磁性転移温度と反強磁性モーメントの間の関係を、圧力をパラメータとして求めたところ、低圧力では両者は比例関係を持ち、モーメントが消失する臨界圧力近傍では、転移温度は殆ど一定のまま反強磁性モーメントだけが急激に減少するという極めて興味深い現象が観測された。この現象が、重い電子系物質での、いわゆる微小モーメント秩序と関連があると考え、その一般性を調べるために行った、Ce(Ru0.85Rh0.15)2Si2での実験では、この現象がより顕著に観測され、臨界圧力領域では転移温度とモーメントは低圧側とは別の比例関係を持つことが明らかになった。このことから、重い電子系の長距離秩序には、異なる二つのregime、即ち、RKKY-regimeと準粒子regimeが存在し、後者が、微小モーメント秩序の正体であるとの結論を得た。この結論は、重い電子系の磁気秩序に関する従来の理論に重要な変更をせまるものと考えており、より詳しい研究を行うため、2000年度の科研費に「重い電子系における圧力誘起量子現象の中性子散乱による研究」を申請した。
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