温度変化による価数相転移を示す典型的化合物YbInCu_4の単結晶をFlux法により作成し、常圧下および高圧下でCu核のNQR測定を行った。常圧下での測定も単結晶を用いた測定は今回が初めてであり、これまでの多結晶試料による結果とほぼ同様の結果を得たが、(T_1t)^-1については従来の結果より小さい値を得た。高圧下でのCu核のNQR測定では、核四重極共鳴周波数ν_q及びスピンー格子緩和時間T_1の温度変化を、約17kbarまでの高圧下で測定することに成功した。尚、その際圧力セル内の発生圧力は、同じセル内に入れた強磁性Co中の^<59>Co NMR周波数の圧力依存性を用いて、±0.2kbarの精度で正確に決めた。その結果、(1)いずれの圧力下でもν_qの温度変化に転移点で飛びがあること、および(2)転移温度の圧力変化は-2.2K/kbarであることを微視的に明らかにした。また、(3)T_1がいずれの圧力下でも低温相はKorringa則に従って温度変化.し、一方高温相ではほとんど温度変化はないことが分かつた。とれより、YbInCu_4中のYb 4f電子は、転移点以下では遍歴的であり、その(T_1T)^<-1>の値が圧力とともに増大していることから、フェルミ面での状態密度が圧力とともに増大することを明らかにした。転移温度が加圧により顕著に降下しており、同時にフェルミ面での状態密度が増加していることから、価数相転移の機構には、電子構造の変化が大きく寄与していることが明らかとなり、今後この点をふまえた理論的解明が重要となるものと考えられる。
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