1.CuGeO_3系 (1)Zn、SiやNiをドープした単結晶のラマン散乱より、スピンパイエルス相で現れる折り返しフォノンを調べた。ドープ濃度が増えると、転移温度と伴に格子変位の大きさが低下し、スピンパイエルス転移は抑圧され、約2%以上では長距離秩序は起こらない。また、低温で現れる反強磁性相でも、折り返しフォノンが観測でき、この相でも超格子構造が存在することを確かめた。約2%以上では超格子構造(短距離秩序は存在するが)を伴わない反強磁性相に転移する。 (2)Zn、SiやNiをドープした系では、選択則の破れから磁気ギャップモードの1次ラマン散乱を観測した。2つの磁気励起束縛状態からの2次ラマンピークは、ドープ量を増やすと共鳴状態になり、急速に消失する。このことは、主に磁気励起の寿命が短くなるためと理解でき、グリーン関数を用いて理論的に示した。 (3)Niドープ系での高磁場下で誘起される不整合相では、磁気ギャップモードはソリトン格子からの励起に成り、高周波数にピークが移動し、磁気励起束縛・共鳴状態の散乱強度は急速に減少する。 (4)高濃度にMgやNiドープした試料の室温・静水圧下でのラマン散乱より、純粋な試料の非静水圧下で現れるpyroxene構造への逐次相転移が起こることを発見した。 (5)高濃度にMgをドープした試料で、低温・高圧下でスピンパイエルス相が復活する事を、折り返しフォノンを観測することより示した。 2.α′-NaV _2O_5系 (1)低温相で磁気ギャップモードやスピノン2次ラマンバンドをラマン散乱で観測した。更に、3本の超格子構造を示す折り返しフォノンを観測した。Na^+イオン欠損の量を増加させると、折り返しフォノンのラマン散乱強度が減り、半値幅が増大し、磁気励起の強度が減少する。 (2)V^<4+>イオンのd-d遷移による電子バンドとフォノンピークの相互作用によるファノ効果を観測した。Na^+イオン欠損量を増加させると、ファノ効果は弱まる。これは、フォノン-フォノン緩和過程がフォノン-電子の緩和過程より支配的になると考え、理論的に示した。
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