| 研究概要 |
量子スピン系では,低次元性やフラストレーションのために強い量子ゆらぎがはたらき,反強磁性などのスピン秩序が形成されず基底状態が無秩序状態となることがある.このときスピンの励起には有限のエネルギー,すなわちスピン・ギャップが必要となる.スピン・ギャップ出現のメカニズムや基底状態の性質を調べてきた.
本年度は,昨年までに開発した周期的混合量子スピン鎖を非線形シグマ模型に変換する方法をいくつかの4倍周期の場合に適用した.この方法では,スピン鎖のハミルトニアンに対して周期の何倍かを1つのブロックとしてブロックごとに変換を行うため,変換の前後で自由度の数が変化せず,あいまさなく非線形シグマ模型を導出できる.その結果,4倍周期の場合に対する無秩序状態間の相境界を表す方程式を得て,これより相図を求めた.これらの相図はどのような大きさのスピンが混合しているかに応じて,特徴的な豊富な相を示す.すなわち,パラメータを変化させることで連続には移り変われないような多数の無秩序状態が見いだされた.各相の特徴を表すためにシングレット・クラスター・ソリッドの描像を導入した.多くの場合,この描像によって各相の基底状態の波動関数を定性的に説明できることがわかった.
また,歪んだダイヤモンド型スピン鎖で表される実際の物質が発見され,帯磁率などが測定されたのに応じて,理論的な検討を行っている.ダイヤモンド型スピン鎖については報告者らの厳密解がある.この知識を生かして歪んだ楊合の帯磁率とスピン・ギャップを検討している.
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