交替鎖量子磁性体としてニッケルのボンド交替鎖([{Ni(Medpt)(μ-N_3)(μ-ox)}_n]{(ClO_4)0.5H_2O}_n)(MedPt=C_7H_<19>N_3)とニッケルと銅のスピン交替鎖(NiCu(pba)(D_2O)_32D_2O)(pba=C_7H_6N_2O_6)の化合物を合成して帯磁率と磁化を測定し、その磁気的性質を調べた。また、梯子状鎖量子磁性体としてCu2(C_5H_<12>N_2)Cl_4の粉末試料を合成し、帯磁率と磁化及び電子スピン共鳴(ESR)測定を行った。順番にその結果について説明する。まず、ニッケルのボンド交替鎖の研究はAffleck-Haldaneの理論的予想(1987)に端を発した交換相互作用が交互に異なるスピン量子数(S)1の一次元反強磁性体の実験研究である。この化合物の磁化測定で量子効果に基づく非自明な磁化のプラトーを観測し、数値計算との比較により交替比や交換相互作用の大きさを決定した。また比較のためにニッケルのダイマー化合物 ([Ni_2(Medpt)_2(μ-Ox)(H_2O)_2](ClO_4)_22H_2O)の帯磁率、磁化測定を行った。スピン交替鎖の研究は最近主に理論的に精力的に行われており、この系の興味ある性質が示されている が、実験的にはほとんどなされいなかった。上記のスピン交替鎖(フェリ磁性鎖)の帯磁率測定を行い、数値計算(S=1/2&1のフェリ磁性鎖)との比較によって交換相互作用定数やg値を評価し、このフェリ磁性体の帯磁率が印加する磁場の大きさによって大きく変化することを実験的に初めて示した。梯子状鎖では上に述べた測定手段によりシングレット基底状態を持つこの系のエネルギーギャップの大きさを見積もった。ESR強度の温度依存性からシングレット基底状態とトリプレット励起状態を仮定して比較を行ったところ他の測定で見積もったエネルギーギャップより大きな値が得られた。
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