ニッケルのボンド交替鎖化合物Ni(333-tet)(μ-N0_2)(ClO_4)(333-tet=C_9H_<24>N_4)の単結晶試料を合成して帯磁率と磁化を測定し、ボンド交替比や交換相互作用定数などを求めた。この化合物の72Tまでの強磁場測定で65Tあたりに飽和磁化の半分にプラトーを観測した。この研究はAffleck-Haldaneの理論予想(1987)に端を発した交換相互作用が交互に異なるスピン量子数(S)1の一次元反強磁性体の実験研究であり、この化合物の磁化測定でも量子効果に基づく非自明な磁化のプラトーを観測した。また、前年度合成したニッケルと銅のスピン交替鎖NiCu(pba) (D_2O)_32D_20(pba=C_7H_6N_2O_6)の磁化測定を詳細に行い、ニッケルと銅の反強磁性ダイマー化合物[Ni(dpt)(H_2O)Cu(pba)]2H_2O(dpt=C_6H_<17>N_3)の磁化との比較から低磁場で前者は強磁性的な性質を有することを明らかにした。そしてこのスピン交替鎖化合物のプロトンNMR測定を行い、縦緩和時間の逆数(1/T_1)が1/H^<1/2>に比例することがわかり、長距離秩序状態でないにも関わらず、この系の特殊性からスピン波理論に基づいて解析しこの磁場依存性を導き出した。さらに梯子状鎖化合物Cu_2(C_5H_<12>N_2)C1_4の単結晶試料で磁場中比熱測定を行った。この物質は二本足の梯子と見なされおよそ7Tまで非磁性の基底状態をもちエネルギーギャップを有することが知られている。この系の主に7T以上のギャップレス相での比熱の振る舞いを調べ、スピノンバンドによる緩やかなピークを観測したが、数値計算結果とは定量的に異なった。
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