研究概要 |
ニッケルのボンド交替鎖化合物Ni(333-tet)(μ-NO_2)(ClO_4)(333-tet=N,N′-bis(3-aminopropyl)-1,3-propanediamine)のニッケルサイトを銅や亜鉛に置換した単結晶試料を合成し、帯磁率や磁化、電子スピン共鳴(ESR)実験を行い、基底状態が予想されるシングレットダイマー相にあるものなのかを調べた。その結果、帯磁率においては鎖方向と垂直方向で非常に異なった振る舞いが観測され、ESRでは不純物を含まない試料では観測されなかったシグナルを観測した。これらの結果をシングレットペアーを組めなかったサイトにスピン1が現れるとして解析して良い一致をみた。 銅の梯子状鎖化合物Cu_2(C_5H_<12>N_2)_2Cl_4やジグザグ鎖化合物(N_2H_5)CuCl_3の単結晶試料を合成し、帯磁率、磁化や比熱を測定した。前者の化合物の比熱はS=1/2の二本足の反強磁性梯子の数値計算結果とよく一致した。このフィッテイングの結果から梯子の方の交換相互作用定数が足方向のそれの5倍ほどの大きさであることが分かった。エネルギーギャップを有する7T以下の磁場中の比熱は計算された比熱とよくあうのに対し、7T以上の磁場では低温で二種類のピークが観測され計算とは大きく異なった。それらのピークの起源について考察した。後者の化合物の帯磁率や磁化はS=1/2の一次元ハイゼンベルグ反強磁性体のそれらに類似している。そこで近接(J_1)一次近接相互作用(J_2)のあるS=1/2の反強磁性鎖においてギャップレスになるJ_2/J_1やギャップの小さくなるJ_2の大きな領域での計算で得られた帯磁率や磁化と比較して後者の場合に相当することがわかった。
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