1. C_<60>固体は面心立方の分子配置をとるが、T_c=260Kで分子の配向に関する規則-不規則転移を起こす。また、T>Tcでも高圧下で規則相が実現される。C_<60>分子の自由回転を仮定して計算されたGirifalcoの分子間相互作用は不規則相の状態方程式をよく記述するが、規則相に対しては明らかに適用できない。本研究では、規則相の分子間相互作用としてGirifalcoの分子間相互作用をスケールし直した簡単なモデルを提唱し、そのモデルを物理的に正当化するとともに、それが広い圧力領域に渡る規則相の状態方程式も再現できることを示した。 2. 分子間相互作用の引力の及ぶ範囲が短距離になると、気相-液相が起こらなくなり、高密度流体としての液体は存在しなくなることが最近の研究で明らかになっている。C_<60>はちょうどこのような境界にあるのではないかという観点から、これまでにモンテカルロ(MC)法と分子動力学(MD)法による計算機実験および理論計算がいくつが行われた。しかし、それらの結果は定性的または定量的にお互いに異なり、C_<60>の相図はまだ確立されていない。C_<60>分子間ポテンシャルの近距離における斥力は非常に大きく、MCまたはMDでビリアル圧カを正確に計算することは困難であり、計算実験の結果がお互いに異なるのは主としてこれに帰因しているものと思われる。本研究では、この問題を解決するためにMC法による計算機実験を行った。この計算機実験では上記の困難を回避するために、ビリアル圧力の計算に頼らないで、等密度線に沿って内部エネルギーを積分する方法で流体の状態方程式を求めた。これから得られた気相-液相の臨界温度は約1980K、三重点の温度は1880Kであり、約100Kの幅で液相が存在するという結果が得られた。
|