研究課題/領域番号 |
10640361
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
白倉 孝行 岩手大学, 人文社会科学部, 助教授 (90187534)
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研究分担者 |
松原 史卓 東北大学, 工学部, 教授 (90124627)
進藤 浩一 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (10004384)
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キーワード | スピングラス / モンテカルロシミュレーション / ランダムスピン系 / 高速化アルゴリズム / 複雑スピン系 |
研究概要 |
クラスター熱浴モンテカルロ法の複雑スピン系への応用として、本年度は主に二次元イジングスピングラス(SG)の研究を行った。特に、二次元イジングSGにおいては、その相互作用の分布が連続型の場合(Gaussianモデル)と離散型の場合(±Jモデル)で、有限温度においても定性的な違い(具体的には有限温度におけるSG相転移の有無)があるのではないかと申請者らは前々から疑っていたので、その点を明確にすることとした。クラスター熱浴モンテカルロ法により、二次元イジング±JSGと二次元イジング Gaussian SGの低温での性質を調べ、次のことが明らかになった。 1. Defect自由エネルギーΔFの振舞いは、±JSGでは温度が0.2J以下でわずかにサイズとともに増加しており、有限温度でのSG相転移(Tc〜0.2J)が示唆される。一方、Gaussian SGにおいては、ΔFは絶対零度でもサイズととに減少し、有限温度でのSG相転移は示唆されない。 2. スピン凍結に対するBinderパラメーターg_Lの振舞いも、±JSGでは異なったサイズに対してT-0.2J近傍で交差がみられ、Tc〜0.2Jを支持する結果となっている。一方、Gaussian SGのg_Lでは有限温度での交差はみられない。 3. gL、スピングラス帯磁率、オーダーパラメーター分布関数の有限サイズスケーリングによる解析も、±JSGではTc〜0.2Jを、Gaussian SGではTc〜0を裏付けるものとなっている。 今後は、±JSGでTc〜0.2Jとして、その低温相の性質(分子場モデル的か、dropletモデル的か)を調べてゆきたい。
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