研究概要 |
場の量子論によれば,グリーン関数Gの汎関数としての自己エネルギーΣ[G]はLuttinger-Ward(LW)の熱力学ポテンシャルΦ[G]を用いて,Σ[G]=δΦ/δGで与えられるが,私はこのΦ[G]を構成する無限個の項を組織的に作り上げる演算子Fの存在を証明し,それを使えば,LWの関係式はΣ=F{Σ}の形に変換され,正確なΣはFの不動点であること(自己エネルギー改訂演算子法)を示した.そして,このFの問題はスカラーバーテックスΓ_Sのそれに還元され,Γ_Sはワード恒等式(WI)を通して決定されるべきであることを明らかにしてきた. さて,このWIにおいてベクトルバーテックスΓ_Vの寄与を無視する近似でFを与えるゲージ不変自己無撞着法を提唱したが,今年度はその精度を上げるためにΓ_Sの効果を取り込む定式化を試みた.そのためにΓ_SとΓ_Vの比で定義される関数Rを導入し,このRの物理的な性格を探った. まず,フェルミ流体理論による考察から,一般に静的な長波長極限でRは電荷チャネルでは圧縮率,スピンチャネルではスピン帯磁率を使って正確に表現できることを見いだし,電子ガス系での計算からそれを確かめた.また,少数サイトのハバード模型における厳密対角化からΓ_SやΓ_Vを計算し,それらを用いてRの正確な関数形を得た.そして,そのRを再現するための解析的・数値的な手法を開発し,少なくとオンサイトクーロン斥力Uがバンド幅W以下のような場合には十分正確なRを求めるアルゴリズムを得た. 今後,このRを組み込んだFを用いて1次元や2次元ハバード模型におけるGを求めると共に,強結合系への拡張や超伝導状態を記述する定式化も行う.
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