重い電子系における隠れた秩序パラメーターと多重極モーメント

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10640364
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 斯波 弘行 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (30028196)
• キーワード: 四重極子秩序 / 八重極モーメント / 多重極モーメント / 電荷秩序 / f電子系 / 重い電子系

研究概要

(1)CeB_6における八重極モーメントの重要性とその役割
本研究ではCeイオン間の相互作用をミクロに考察した。機構としては伝導電子の波動関数と4f軌道との混成効果が主要なものであると仮定し、さらに、Ceイオンは(4f)^1(すなわちCe^<3+>)がメインの状態で、これが(4f)^0(Ce^<4+>)と混成しているという自然な仮定をすると、O_<xy>型四重極間の相互作用とT_<xyz>型八重極間の相互作用は同一であることが一般的に示された。従って、CeB_6における反強八重極モーメントの重要性は確立されたと言ってよい。
(2)TmTeにおける四重極秩序の性格と反強磁性相の関係
TmTeの反強四重極秩序は、現象的には、CeB_6と似ているが、結晶構造はNaCl型で、結晶場分裂が著しく小さい、といった違いがある。このTmTeの特徴を取り入れて反強四重極秩序の理論を作った。重要な帰結の一つは、この四重極秩序の結果、低温で起こる同じ波数ベクトルの反強磁性相は必然的に強磁性モーメントを伴う(キャントした反強磁性)であることが示され、実験で証明されたことである。
(3)Yb_4As_3の電荷秩序相の性質
Yb_4As_3では電荷秩序によって形成されたYb^<3+>鎖が低温の現象を支配している。このYb^<3+>鎖の磁気的性質は、軌道磁気モーメントが生きているにも拘らず、一面では等方的のように振る舞う。この謎を解明するため、結晶場の波動関数を考慮してYb^<3+>を記述する有効ハミルトニアンの導出をした。

研究成果

• [文献書誌] R.Shiina,O.Sakai,H.Shiba and Thalmeier: "Interplay of Field-Induced Multipoles in C_eB_6"J. Phys. Soc. Jpn. 67. 941-949 (1998)
• [文献書誌] P.Thalmeier,R.Shiina,H.Shiba and O.Sakai: "Theory of Multipolar Excitations in C_eB_6"J. Phys. Soc. Jpn. 67. 2363-2371 (1998)
• [文献書誌] O.Sakai,R.Shiina,H.Shiba and P.Thalmeier: "Antiferro-Polarization of Octupolar Moment in Phase III of C_eB_6 - Analysis NMR spectra"J. Phys. Soc. Jpn. 68. 1364-1370 (1999)
• [文献書誌] R.Shiina,H.Shiba and O.Sakai: "Antiferro-Quadrupolar Ordering and Field-Induced Multipoles in f-Electron systems"JJAP Series. 11. 176-178 (1999)
• [文献書誌] R.Shiina and H.Shiba: "Theory of Antiferro-Quadrupolar Ordering of TmTe-Similarity and Dissimilarity with C_eB_6"Physica B. 259-261. 322-323 (1999)
• [文献書誌] H.Shiba and R.Shiina: "Aspects of Coupled Spin-Orbital Degrees of Freedom in d- and f-Electron systems"Physics and chemistry of Transitin-Metal Oxides. 45-52 (1999)
• [文献書誌] 斯波弘行: "まとめと展望(理論)"固体物理. 特集号. 369-374 (1998)