(1)C_eB_6における八重極モーメントの重要性とその役割 本研究ではC_eイオン間の相互作用をミクロに考察した。機構としては電導電子の波動関数と4f軌道との混成硬化が主要なものであると仮定し、さらに、C_eイオンは(4f)^1(すなわちCe^<3+>)がメインの状態で、これが(4f)^0(Ce^<4+>)と混成しているという自然な過程をすると、O_<xy>型四重極間の相互作用とT_<xyz>型八重極間の相互作用は同一であることが一般的に示された。従って、CeB_6における反強八重極モーメントの重要性は確立されたと言ってよいだろう。 (2)TmTeにおける四重極秩序の性格と反強磁性相の関係 TmTeにおける反強四重極秩序は、現象的には、CeB_6と似ている。しかし、結晶構造はCsCl型でなく、NaCl型であり、結晶場分裂がCeB_6に比べ著しく小さい、といった違いがある。このTmTeの特徴を取り入れて反強四重極秩序の理論を作った。実験との関連で重要な帰結の一つは、この四重極秩序の結果、低温で起こる同じ波数ベクトルの反強磁性相は必然的に強磁性モーメントを伴う(キャントした反強磁性)であることが示されたことである。 (3)Yb_4As_3の電荷秩序相の性質 Yb_4As_3はキャリヤー数が少ないにも拘らず重い電子的振る舞いを見せる物質として知られていたが、これが電荷秩序によって形成されたYb^<3+>鎖によるらしいことをFuldeら^<3)>が初めて指摘してから研究の流れが変わった。このYb^<3+>鎖の磁気的性質は、軌道磁気モーメントが生きているにも拘らず、一面では等方的のように振る舞う。この謎を解明するため、結晶場の波動関数を考慮してYb^<3+>を記述する有効ハミルトニアンの導出をした。押川正毅らの指摘のように、この物質には交替型のDzyaloshinsky-Moriya相互作用が存在する。
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