自然界のパターン形成現象において、Edenモデルや拡散律速凝集モデルのような成長モデルは、非平衡下における粗い成長界面やフラクタル成長界面を生成する機構を研究する上で重要な役割を果たしてきた。真空中の蒸着でできるパターンやバクテリアのコロニー、金属葉など多くのパターンがこれらの成長モデルで記述される。しかしながなら、パターン形成に関する多くの研究がなされてきたにもかかわらず、パターン選択機構の問題や安定性の問題は未解決のまま取り残されている。例えば、Edenモデルではコンパクなクラスターで自己アファイン的界面をもつものが生成されていることが知られているが、非常に細い糸状のクラスターやフラクタル的なものも偶然に生まれるかもしれない。計算機や実験で我々が観測しているパターンは、どの程度の確率で観測されるのであろうか?この問題を解明するために、成長モデルの成長径路の観測確率に対するエントロピー・スペクトラムに関する研究と成長界面サイズに関連した離散力学系の導入を行い、クラスターがどのようにしてクラスターのアンサンブル平均に対応する最も確からしい観測パターンに収束してゆくかを調べた。その結果、与えられた初期条件からのEdenクラスターの周縁サイズの時間発展は少数自由度力学系で実効的に記述できることが判明した。力学系の固定点は定常的成長状態に対応し、その固定点における最大固有値も数値的に求める手法も開発された。パターンの安定性とパターン選択機構を定量的に議論することが可能となり、成長モデルによって作り出される自己アファイン的界面の動力学に対する理解が進展した。
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