1)我々はこれまでコロイド粒子と高分子を混合した系において粒子間に働く相互作用引力のひとつである枯渇凝集力を測定してきた。この手法は光ピンセットを使い粒子を他の粒子から引き剥がすことにより力の最大値を測定するというものである。この枯渇力測定の際、粒子表面に吸着した高分子が他の粒子と架橋を起こすために起こる架橋凝集力も測定にかかる可能性があり、これが問題となっていた。我々はある種の界面活性剤が粒子表面に高分子より優先的に吸着することを実験的に確かめ、この界面活性剤をも加えた系において粒子間の引力を測定した。架橋を阻害した結果枯渇力は理論とよい一致を見せた。またこれまでの2者の混合系の結果と比較したところ、枯渇力と架橋力が働く高分子濃度領域とその力のオーダーはほぼ同じであることを見出した。 2)2本のレーザービームを使用した光ピンセット用の光学系と、このビームのスポット間の距離を精密に制御するシステムを製作した。このシステムと、前年度までに開発した画像取り込み装置を使った粒子認識システムを組み合わせることにより、コロイド2粒子間の相互作用ポテンシャルを実験的に決定することに成功した。これは2つの光ピンセットに捕らえられた粒子を近づけ、粒子の感じるポテンシャルをその存在確率分布から求め、それから光ピンセットの作るポテンシャルを差し引くことで得られる。この手法により、1)のようなこれまで知られている方法に較べ、2-3桁小さい力まで検出できるようになった。また、得られた結果は予備的なものだが、DLVO理論として知られる粒子間相互作用の理論とよい一致を見た。 3)前期の粒子認識システムをコロイド結晶に適応し、結晶中の粒子の運動解析を行った。前年度までに、結晶中の粒子は単純な調和振動子のポテンシャル中を拡散する粒子としての簡単なモデルでは説明ができないことを確かめており、それに代わり、結晶をオーバーダンプされた結合振動体と捉えることができるという予測を行っていたが、実験結果を完全に説明するには至っていない。
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