研究概要 |
金属クラスターの自発的合金化機構の解明について、理論グループ、実験グループそれぞれ以下の内容で研究を行った。 理論グループは、動力学計算機シミュレーションと電子状態計算により、自発合金化機構を調べた。原子間の相互作用として、2体力だけでなく、多体力(embedded atom potential)を2次元平盤状合金クラスターに用いた動力学計算の結果、(1)表面揺動により、内部原子の拡散が引き起こされ、合金化が促進される。クラスターサイズがある臨界値を越えると、表面の割合は小さくなり、合金化は遅くなる(2)拡散により、クラスター内部まで侵入した異種原子どうしの隣り合いが避けられ、自発合金化が進む。その結果、クラスターに属する異種原子の割合が大きい程、合金化は速い(3)合金化速度はアレニウスプロットに乗り、常温での合金化時間はミリ秒程度になることが予測される、などの結果が得られた。これらのモデルの3次元クラスターへの応用及びクラスター基盤へのエネルギー散逸効果などを検討している。一方、Au,Ag,Cu,Ptなどの金属クラスターにおける電子の振る舞いを調べるために、密度汎関数法の電子状態計算における遷移状態法から、tight-b inding transferエネルギー、core-core間の反発ポテンシャルの原子距離変化を種々の原子対について求めた。それらの相互作用の固体および大きいサイズの金属クラスターへの有効妥当性を調べ、動力学計算へ応用を検討中である。実験グループは、透過型電子顕微鏡や光学吸収分光により、自発的合金化機構ならびに生成される合金クラスターの相平衡について調べた結果、(1)合金化が起こる臨界粒径は合金生成エンタルピーの増大とともに大きくなる->合金化プロセスの駆動力は化学的自由エネルギーの減少(2)合金クラスタ一粒径が小さくなると、クラスター独特の構造が発現する、などが明らかとなった。今後、理論・実験両結果を更に検討し、自発合金化機構の解明を行う。
|