研究概要 |
拡散・反応系の代表であるベルーゾフ・ジャボチンスキー(BZ)反応を,活性機能として組み込んだ。まず,ビニル基を取り付けた触媒分子Ru(bpy)_3(ルテニウム錯体)を,イソプロピルアクリルアミドゲル(NIPA)に共有結合させた。このようなゲルをBZ溶液に浸すことにより,周期的な酸化-還元反応をゲル内に局在させた。 試料として、長さ6mmで0.6mm径の1次元形状に近いゲルを用いた。ゲルの一端を容器に固定したところ、化学振動反応に同調して自由端は約20μmの周期的な伸縮振動を示した。化学波の波長に対するゲルの長さの比が整数の時には、ゲルの伸縮振動は起こらなかった。整数からずれるに従って振幅は増し、化学振動と伸縮振動の間に位相差が生じた。これは、酸化領域が膨潤領域となって伝搬していることを意味する。化学振動の周期は、Ru(bpy)_3触媒の濃度の減少に比例して小さくなった。5mMの濃度以下では、優勢な酸化状態の中に還元領域が発生する、所謂還元波が出現することを見い出した。この還元波は、適当なBZ溶液組成においては還元波パルスとして振る舞い、パルスの消滅や分裂など酸化波に見られない特徴が現れた。詳細は、現在検討中である。 NIPAゲルは、温度によって膨潤一収縮転移を起こすことは良く知られている。反応場としてのゲルの温度特性が、化学波に如何に影響するか明らかにした。温度の上昇に伴って化学振動周期は小さくなるが、ゲルの体積相転移点近傍で急激に大きくなり、ピークを形成することが分かった。相転移点でのゲルの収縮による網目の大きさの縮小が化学反応波の伝搬を阻害し、一旦振動周期の増加を引き起こす。しかし、更なる温度上昇は、化学反応自体の周期は減少させる。後者が前者に打ち勝つことにより、ピークが形成されるものと考えられる。
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