研究概要 |
代表的な拡散・反応系であるベルーゾフ・ジャボチンスキー(BZ)反応を,活性機能として組み込んだ。BZ反応の触媒分子Ru(bpy)_3(ルテニウム錯体)をイソプロビルアクリルアミド(NIPAM)ゲルに共有結合させ、このようなゲルをBZ溶液に浸すことにより周期的な酸化還元反応をゲル内に局在させた。ゲルの一端をBZ反応容器に固定し、他端を自由にしたところ、化学振動反応に同調して自由端は約40μmの周期的な伸縮振動を示した。このような自励振動ゲルの構造変化が振動性の化学反応に及ぼす効果を明らかにした。まずNIPAMゲル特有の温度による体積転移に着目した。結果、(1)酸化波の周波数は温度上昇と共にアレニウス型の温度依存性に従って緩やかに増加するが、転移温度T_cを境に急激に減少する。(2)酸化波の速度は温度上昇と共に極めて緩やかに増加し、T_cを境に急激に減少する。(3)T_c以下の膨潤状態の拡散を単純なゲル網目中の分子拡散として捉えると、拡散係数はD=D_0exp(-R/ζ)のように表されるが、T_c以上のゲルの収縮状態ではこの式に従わない。ここで、D_0は溶液中での拡散係数、Rは分子の大きさ、ζは網目のサイズである。 臭素酸ナトリウム濃度に対するマロン酸濃度の比に依存して多様な化学波が出現した。特にRの値の小さい時には、通常の酸化波とは対照的に優勢な酸化状態の中に還元パルス波が発生した。この波は次の様な興味ある挙動を示した。(1)1つのパルス波から反対向きに進行する一対の還元パルス波が出現する(自己複製現象)。(2)一対の還元パルス波が衝突によって一旦消失し、衝突点から反対向きに進行する一対の還元パルス波が発生ずる(保存現象)。これらの挙動によって形成される還元波の時空パターンは、温度の上昇に伴って対称パターンからカオス的なパターンを経て非対称なパターンへ変化した。
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