研究概要 |
[目的,今年度の目標]分子定数がよく求められているとされる基本的な分子でも,振動励起状態については未だ精度の高い分光データが不足していることに注目して,本研究では,振動励起状態の回転遷移を直接測定することにより励起状態の分子定数を1-2桁向上させることを目標としている。今年度はH_2O分子の〓振動励起状態(v=1)をまず手掛けた。また,同位体のD_2Oについても測定を始めた。 [成果]実験は,われわれの開発した炭酸ガスレーザー差周波型遠赤外分光計を用いて,遠赤外領域にある回転遷移を測定した。ほぼ当初の計画と予想のとおり進めることができた。 (1) v_2振動のv=1励起状態は基底状態から波数1600cm^<-1>上方にあるが,強度の強い回転スペクトルは通常の試料セルを室温でもちいても観測することができる。この方法で32本の遷移周波数を測定した。 (2) 強度が強くない回転スペクトルを測定するために,励起状態の分子数分布を増やす必要があった。このために気体試料をヒーターにより加熱する方式の高温試科セルを製作し,さらに15本の測定を行った。 (3) この測定により回転遷移の周波数精度が最大3桁向上した。データをもとに励起状態の回転定数を求めた。定数の精度も1-2桁向上した。 (4) 同位体のD_2Oについては振動励起状態を測る前に,まず基底状態のデータから測定し直して精度をあげた。 (5) より高い励起状態の測定に備えて二重共鳴実験の準備を進めた。そのために1Wクラスのパワーをもつ半導体レーザーを駆動するための電源と外部共振型レーザー光学系を設計製作した。
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