研究概要 |
本研究は,希ガスクラスターを標的として電子エネルギー損失分光実験を行い,孤立原子・分子ではその性質がよく知られているFeshbach共鳴(負イオン共鳴)状態が,クラスターという有限の大きさを持った閉じた空間に存在しうるかどうかの直接的な実験的検証を行うことを目的としている. 本研究期間において,Krクラスターを標的として電子エネルギー損失スペクトルを測定し,以下の知見を得た. ・入射電子エネルギー50eV〜200eVでの測定を行い,サイズが1400原子のクラスターにおける表面およびバルク励起子の生成エネルギーを決定した. ・入射電子エネルギーが50eVの場合は表面励起子のピークのみが観測され,入射エネルギーが高くなるにつれ,バルク励起子のピークが現れた.これはKrクラスター内での電子の平均自由行程のエネルギー依存性で説明できることを明らかにした. ・KrクラスターにおけるFeshbach型負イオン共鳴状態は,現在の測定系の感度の範囲内では観測されなかった.
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