本研究はレーザー冷却法を用いてマイクロケルビン台の極低温原子を作り、さらにこれから多数の原子の原子波の位相が揃ったコヒーレントな原子線を生成するための基礎技術の開発およびコヒーレント原子線の基礎物理特性を調べることを目的としたものである。平成10年度において主にレーザー冷却法および磁気トラップによる蒸発冷却法を用いた方法によってRb原子のボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC)を実現する実験装置の設計および製作を行い、平成11年度においては開発した装置を用いてBEC生成のための予備実験を行った。開発した装置は室温Rb原子をレーザー冷却・捕捉するための2つのガラスセルを細いパイプで繋いだダブル磁気光学トラップ(MOT)と、これをさらに冷却するためのDC磁気トラップである。この装置によって10^<-11>トル以下の超高真空下で10^9個以上のRb原子をレーザー冷却・捕捉が可能になり、これをさらに磁気トラップで捕捉して蒸発冷却法により数100nKの極低温が達成可能になる。本研究においては今のところ上記の装置を用いてRb原子のレーザー冷却を行い、その原子数は10^8個、捕捉原子の寿命は約3分が得られた。今後、さらに装置の最適化を行って原子数を一桁向上し、磁気トラップで蒸発冷却することによりボーズ・アインシュタイン凝縮が実現されるもの期待される。またこのようなボーズ凝縮原子をレーザー光を用いて少しずつ磁気トラップから取り出すことによりコヒーレントな原子線を生成する原子レーザーの実現する新しい方法に対しても理論的な検討を行った。
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