本研究はレーザー冷却法を用いてμK台の極低温原子を生成して、これを用いて位相が揃った物質波が放出されるコヒーレント原子線(原子レーザー)を実現するための基礎技術の開発を行うことを目的としたものである。このコヒーレント原子線を実現する方法としては先ずレーザー冷却および磁気トラップ中の蒸発冷却を用いて原子のボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC)を生成してこのBEC原子を少しずつ取り出すことを検討し、^<87>Rb原子のBEC生成の実験装置の開発を行った。この結果、ダブル磁気光学トラップと呼ばれる装置を開発して約10μKの極低温^<87>Rb原子を超高真空(10^<11>トル)のガラスセル内で約5×10^9個溜めることができた。さらに3つのコイルから構成される小型で低消費電力な磁気トラップを開発し、レーザー冷却原子をこの磁気トラップで高効率で捕捉し、さらにBEC生成に必要な高密度に圧縮することが可能となった。これらの予備実験の結果より、今後実験条件の最適化を行うことによりこの実験装置を用いて蒸発冷却を行うことによりBECが十分達成される見通しがついた。今回開発した磁気トラップは他の同様のものに比べて磁場大きな勾配が得られ、高い原子密度が得られるため、BEC生成において有利である。また小型・低消費電力で熱の発生が少ないため、安定な磁場ポテンシャルが得られるため、トラップ中のBEC原子を安定に一定の割合で取り出す連続波原子レーザーの実現に有利である。これらの予備実験の成果を基に今後実用的な高フラックスで連続的なコヒーレント原子線を生成するための方法を検討し、今後の実験手法の指針を得た。
|