一次元量子系における接触相互作用を考察した。この次元では、通常のδ函数以外にも波動函数そのものに非連続性をもたらす「第二種の」接触相互作用が存在し得ることが数理的に知られていたが、これをいかにして実際に構成するかが不明であった。これを局所オペレーターの零レンジ極限として実現する手法を編み出した。 この第二種の接触力を二粒子間の相互作用として働く場合、通常のδ函数とは逆に相対波動函数の対称状態では作用が無く、反対称な状態にのみ作用することに注目して、これが一次元フェルミオン多体系の二体力の一般的な短距離極限として考えられることを指摘した。そして更にこの一次元フェルミオン多体系がδ相互作用する同数の一次元ボソン多体系と双対な関係にあることを示した。これはつまり一方の弱結合が他方の強結合に対応するという格好で双方を同等なものと見なせるということである。このボソン系についてはベーテ仮説による厳密解が知られているので、これは一次元フェルミオン多体系の新たな可解モデルを考案したことに相当する。 また通常のδ函数と第二種の接触力函数を組み合わせたもっとも一般的な三パラメタの一次元点状相互作用を考えると、これを離散スペクトルを持つ閉鎖粒子系に作用させた場合、そのエネルギースペクトルのパラメタ空間に特異性があらわれ、その周りのエネルギ一面が二重螺旋構造をとっていることを解析的、および数値的に示した.これはベリー位相を更にエキゾチックにしたものに相当し、系の外的環境をゆっくり変化させて元に戻したとき基底状態を励起状態に変換させられるということである。 最後に、これまで行ってきた二次元量子ビリヤード系における量子カオス的順位統計の研究では、量子カオス出現の条件の簡潔な解析的表式を得ることが出来た。
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