昨年度に引き続き一次元量子系における接触相互作用を考察した。量子論の基本原理からして許容される最も一般的な4パラメタ族の相互作用をすべて局所オペレーターの零レンジ極限として実現する手法を完成させた。これは波動函数の空間微分に不連続をもたらすデルタ相互作用、波動函数自身に不連続性をもたらす「第二種の接触力」に加えて時間反転についての非対称性をも許容する物を含むが、これを空間的に一点にのみ働く磁束として物理的に解釈が可能なことを示した。ここに登場した第二種の接触力についてさらに詳しく調べ、昨年度に発見された三つのデルタ函数の繰り込まれた零到達距離極限としての表式と、15年ほど以前のPetr Sebaによる非局所分離型ポテンシャルとしての表式が等価である事を示した。さらに接触相互作用のある一次元量子系での散乱過程を考察し、これが簡単な「量子フィルタ」として機能することを発見した。具体的には通常のデルタ相互作用は「ハイパス・フィルタ」、そして第二種の接触相互作用は「ロウパス・フィルタ」となり、両者の混合した一般の場合はある周波数成分の波動函数のみを透過させるものとなることが示された。最後に、一次元量子系における接触相互作用を量子情報処理への応用の可能性を探り、具体例として「量子情報消去フィルター」というものをかんがえ、その性質を調べた。これはデルタ函数型の相互作用を距離を増加させつつ配置したもので、量子的透過率を計算すると入射運動量の非常に不規則な函数となり、デルタ函数の数無限の極限ではフラクタルとなることが示された。
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