研究概要 |
昨年度までの研究で明らかになった(ディラックのデルタ関数を含む)一般化された1次元の点状相互作用の奇妙な諸性質についてその起源の数理物理的な解明を試みた。その結果そこにはS^1×S^3多様体という「非自明な幾何学的構造体」が存在する事が明らかになってきた。一般化された1次元の量子点状相互作用は4パラメターをもって記述される属をなすが 1 この4つのパラメタを選ぶ際に従来式にU(1)×SL(2,R)群で記述されるように取るのは数学的不備があり、相互作用を一意的かつ全的に記述するにはU(2)群で指定されるようにとるのが正しい 2 この群の記述する多様体S^1×S^3にはS^1×S^1で記述される「トーラス」と、S^2記述される「2次元球面」とが部分群として内包され、物理的には「左右対称な点状相互作用」、「スケール変換不変な点状相互作用」にそれぞれ対応している 3 これまでに発見された「らせん状非ホロノミー」「ベリー位相」はこれら部分多様体の幾何学的性質の直接の帰結であり、「双対性」はこの多様体上のより一般的な対称性のひとつに過ぎず、またこれは素粒子論における「超対称性」の一つとして理解可能な場合も含まれる という事が明らかになった。 従来この種のトポロジー的構造は素粒子を記述する量子場の理論のような自由度の多い高度な系にのみに見つかるものと一般に考えられており、一自由度の可解な量子力学系において発見されたのは驚くべき事であって 1 系の簡単さと「可解性」のため非自明幾何学構造の量子力学における発現の詳細な研究が可能 2 高エネルギーの加速器をもってせずとも、ナノスケールの半導体構造を用いた実験によってこのようなエキゾチックな現象とその応用について研究する可能性を示唆するという点からも意義があると考えられる。
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