研究概要 |
近代的な地震観測が行われてから百年余が経過した。この間、日本周辺ではM7クラス以上の大地震が数十回起こっている。本研究では日向灘や三陸沖で過去数十年の間に再来したM7〜8クラスの地震の震源過程を比較し、同一地域での大地震の再現性あるいは非再現性を明かにすることを目的とした。そのため、60年代の地震について、WWSSNの記録の整理、国内の強震計記録の掘り起こしを行い、アナログ記録をデジタイズして、波形のインバージョンを行った。その結果、以下のような極めて興味深い知見を得ることができた。 (1)1968年の十勝沖地震の震源域は2,3個のアスペリティ(大きなすべり域)から成り、その1つは1994年の三陸はるか沖地震でも断層すべりを起こした。この共通アスペリティでのモーメント解放は68年から94年までのモーメント蓄積量と同程度であり、このことからアスペリティにおけるカップリング率はほぼ100%であることが示唆される。 (2)日向灘ではM7クラス相当のアスペリティがやや離れて分布する。ここでは複数のアスペリティが同時に動くことは無いと推測される。 (3)1944年東南海地震は基本的にM8クラス相当の1個のアスペリティから成り、M7クラスのセグメント構造は存在しない。 これらの結果は、日向灘でM8クラスの巨大地震が発生していないこと、逆に、東海地域でM7クラスの地震が皆無であることと調和的である。
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