研究概要 |
本研究の目的は、詳細な3次元地球内部構造(地震波速度及び減衰構造)の推定である。対象とする構造は、全地球構造及び局所的微細構造(沈み込み地域の深さ0-1000kmの構造)である。詳細な構造推定には広帯域波形データの波形インバージョンが有効であるが、膨大な理論波形計算量を要するため、効率的かつ高精度の理論波形計算手法の開発が課題であった。本年度は、(1)全地球構造インバージョンに用いる、3次元不均質地球モデルに対する広帯域理論波形計算手法及びソフトウェアの開発、(2)局所的微細構造インバージョンに必要な理論波形計算手法の開発に関する予備的研究、の2つの研究を行った。 昨年度の研究で,全地球構造の波形インバージョンの理論波形計算には、最適離散化手法(Geller&Takeuchi 1995,GJI)に基づくDirect Solution Methodが有効であることを示した(Cummins,Takeuchi&Geller 1997,GJI)。本年度は、この手法を用いた3次元計算ソフトウェアを開発した(Takeuchi,Geller&Cummins 1999,PEPI)。現実的な計算時間で計算を行えるよう、摂動近似を用いた。適切な摂動近似(高次ボルン近似)を用いれば、現実的な計算時間内で高精度理論波形計算が実施でき、逐次的な波形インバージョンが可能であることがわかった。 一方、局所的微細構造推定に有効な理論波形計算手法として、時間領域の差分法に基づく効率的な計算手法を導出した。第一段階として1次元媒質を考え、最適離散化手法を導出した上で、この離散化方程式を効率的に解くアルゴリズムを開発した(Geller&Takeuchi 1998,GJI)。これにより、従来の差分法に比べて、同じ精度を確保するのに必要な計算時間が約1/10に短縮された。この計算手法は一般的な3次元媒質に拡張でき、将来行う波形インバージョンに応用できる。
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