研究概要 |
本研究の目的はより詳細な3次元地球内部構造(地震波速度および減衰構造)を推定し、地球ダイナミクスに関するあらたな情報を得ることである。我々は、広帯域の観測波形(実体波および表面波データを含む)データそのものを用いた波形インバージョンを、我々の開発した高精度の理論波形計算手法ならびに効率的なアルゴリズムを利用して行なう。 具体的に本年度は以下の研究を行なった。 1.表面波波形データを用いた波形インバージョンにおけるToroidal-Spheroidalカップリングの影響の見積もりを行い、正確な3次元モデルを得るためには、その効果を考慮しなければならないこと、また我々が開発した手法で効率・精度よく計算できることを示した(Hara and Geller,GJI,submitted)。 2.3次元不均質地球に対する波形計算の精度を確認するため、複数の手法を比較する共同研究(COSYプロジェクト、代表ミュンヘン大学H.イーゲル博士)が行われた。その研究に参加し、我々の開発したDSM法の効率及び精度を確認した。共同研究の成果がIgel et al.(Phys.Earth Planet Int,in press)により発表される。 3.実体波波形をデータとする波形インバージョンを行なうための計算負担は表面波インバージョンより重大である。実体波データのインバージョンを可能にするため、さらなるアルゴリズム開発を行い、Takeuchi et al.(Phys.Earth Planet.Int.,in press)で成果を発表した。 4.ローカル構造推定の研究では、差分法などの計算アルゴリズムが波形計算に使われている。我々は新差分法計算アルゴリズムを開発し、3次元計算において従来のアルゴリズムに比べ、同じ精度を確保するための計算時間は100分の1以上縮小できることを示した(Takeuchi and Geller,Phys.Earth Planet.Int.,in press)。
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