研究概要 |
本研究の目的は、より詳細な3次元地球内部構造(地震波速度および減衰構造)を推定し、地球ダイナミクスに関する新たな情報を得ることである。我々は、広帯域の観測波形データ(実体波および表面波データを含む)そのものを用いた波形インバージョンを、我々の開発してきた高精度の理論波形計算手法ならびに効率的なアルゴリズムを用いて行なっている。 本年度は以下のような研究を行なった。 1.表面波波形データを用いた波形インバージョンにおいては、Toroidal-Spheroidalカップリングの影響をより正確に採り入れることが必要であることを示し(Hara and Geller,2000,GJI)、計算ルーチンの並列化を行ない、より高い解像度での上部マントル不均質構造の推定を試みた。その結果、ほぼCPU数に比例する計算効率が得られることを示し、これまで(8次)より高い(12次)次数の球面調和関数基底を用いて内部構造の推定を行なった(Hara and Geller,2001,OHP/ION Joint Symposium)。 2.実体波波形データを用いた予備的なインバージョンを、前年度に開発を行なったインバージョンアルゴリズム(Takeuchi et al.,2000,PEPI)を用いて実施し、全マントルのS波速度構造について、深さ方向約200km,水平方向約4000kmの解像度で推定を行なった(Takeuchi and Geller,2001,OHP/ION Joint Symposium)。 3.これまでに局所的な微細構造を推定するための、有限差分法を用いた理論波形計算の新差分法アルゴリズムを開発してきた(Takeuchi and Geller,2000,PEPI)。しかし、速度構造の不連続面が計算グリッドと一致しない場合には、これまでの手法では精度が悪くなってしまう。このような場合にも高精度な理論波形計算を行なうための境界演算子の導出の理論を開発し、1次元構造の場合に適用を行ない、有用性を示した(Mizutani et al.,2001,SEGJ International Symposium)。
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