日本付近で発生した深発地震から出て、日本国内の観測点で記録されたScS波にみられるスプリッティングを利用して、D"層内においてS波の偏光異方性の性質が比較的短時間で変化しているのではないかという仮説の検証を行った。70年代および80年代の地震については、気象庁の観測点による記録、そして90年代の地震については、大学などによって設置された広帯域地震計による記録から、質の良いものを選んで速いS波の振動方向を解析した。またこれまでに、我々や他の研究者によって発表されている結果も出来るだけ利用した。これらの結果、対象として約30年間で、総数35の地震に関する比較的時間的連続性の良いスプリッティングの情報を得ることが出来た。90年代前半のデータでは、速いS波の振動方向は、時間と共に時計回りに回転するような傾向を見せているが、その他の時間ではこうした傾向はみられなかった。そのため、最初に仮定したような短周期の変動は、存在しないという結論に達した。しかしながら、時間変動すべてが否定されたわけではなく、本研究でえられた長時間にわたる多数のデータにより、より長時間スケールでの変動の可能性が指摘される。
|