研究概要 |
前年度ワークステーション及び大型計算機上に移植した断層系間の弾性的な応力の相互作用を考慮した地震活動のシミュレーション・プログラムを用いて、大規模な断層系の地震活動シミュレーションを行なった.今年度行なった最大規模のシミュレーションは,断層の要素数約900である.このモデルの各種パラメータ(初期応力,すべり欠損速度,内部摩擦係数)を変化させたシミュレーションを行ない,参照モデルとの比較検討を行うことにより,これらのパラメータの摂動が結果として生じる地震活動に及ぼす影響の評価を行なっている.また,初期応力がわずかに異なるモデル10組のアンサンブル平均を取ることにより,参照モデルに対する予測可能性を検討した.要素数約400のモデルでのシミュレーション結果では,初期応力が1%以内の差であれば,アンサンブル平均は1000年程度までは,参照モデルに対して一部の断層における応力変化のよい予測を与えることが示された. 上記と平行して,日本列島の瞬間的な弾性変形を示すと考えられる国土地理院GPS連続観測の結果から,上述のシミュレーションで用いているブロック・断層のモデルでブロック間のすべり欠損速度等を推定した.その結果,GPSから得られるすべり欠損速度は,100年間の測地データから推定されるものより場所によっては2倍近く大きいこと,プレート境界断層などのすべりの方向に差が見られること,などが明らかになった.また,現在使用しているブロック・断層モデルでは,北海道・九州などの変動を十分説明することができないので,新たにこれらの地域のテクトニクスを考慮したモデルを構築して,すべり欠損速度等の推定を行なっている.
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