研究概要 |
1. 地震の自己組織臨界現象モデルを使い、モデルの性質の中で、b値やフラクタル次元など観測可能な性質をグラフ表示して、地震予知シミュレーションを行った。その中で、グラフ上の異常と地震発生との相関が最も強い負のフラクタル次元について、少ない数のデータから安定した値が得られるアルゴリズムを考案し、従来よりも空間・時間分解能をあげて、カリフォルニア地域の地震データを使ってた予知シミュレーションを試みた,事後的には適切な時間・空間幅を選べば地震発生前の異常が検出されるが、事前の予知情報とするには不安定さがあって困難である。微小地震データを含む事例でのテストを今後行いたい。 2. 次に、実際の観測は不可能であるが、モデルの中で計算可能な量を使って、地震発生前にどのような異常が進行しているかを調べた。大地震の発生前に、かなり急激に大地震発生を可能とする確率が増大し、その後に何時起こるかは確率的な偶然に近いことが得られた。力学的な手法ではこの急増の異常は検出不可能であるが、広域的な相関が急増する大きな異常なので、他の手法、例えば地下水異常に連動していると思われる。 3. 地震のスプリング-ブロック・モデルについて、基本となる単一ブロックの2次元モデルの挙動を研究した。1次元モデルの挙動が単純であるのに対して、2次元モデルの挙動は複雑で、しかしモデルに使う摩擦特性に拘わらない普遍的な性質を示す。このモデルでは、弾性的なエネルギー蓄積過程についで、微小なスティック-スリップの繰り返しによるクリープが始まり、その後で自発的に相転移をおこして大振幅のスリップが起こる。その地域の固有地震に相当するこの大きなスリップの時間間隔は、決定論モデルであるにも拘わらず不規則であり、周期性に基づく長期予測が難しいことを示唆する結果となった。
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