研究概要 |
研究の初年度であり,研究費が利用可能になったのが年度途中であったため,本年度は研究基盤の整備に重点をおいた.亜熱帯前線帯の降水活動の定量的な評価のため,全球降水量データであるGPCPデータや,TRMM(熱帯降雨観測衛星)の降雨レーダーやマイクロ波放射計の観測データを収集した.また.現有のワークステーションに大容量の磁気ディスク装置を接続し,ソフトウェアの導入も行って,大量のTRMMデータをワークステーションを用いて解析をするための環境整備を行った.本研究では,亜熱帯前線帯の生成機構を明らかにするため,数値実験も予定している.本年度は,これまで用いてきた大気大循環モデルについてプログラムの若干の改造を行い,対流に伴う運動量の鉛直輸送の効果が実験に取り入れられるようにした. 主な研究成果は以下の通り.TRMMの降雨レーダーとマイクロ波放射計の観測データを用いて,南米周辺域に現れたメソスケールの降雨システムの事例解析を行った.TRMMの特色であるマルチセンサー観測により,降雨系の構造について多くの情報が得られることが確認できた.また,GPCPデータの解析により,亜熱帯域の海上ではこれまでの気候値に比べてかなり多くの降水があることが示された.これまでの気候値は,観測データの不足のため海上では精度が悪いことが予想される.現在,GPCPデータにより示された亜熱帯海上の多量の降水を,TRMMデータにより検証するための解析を行いつつある.
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