研究概要 |
11年度の研究で,GPCP月降水量データを用いて亜熱帯域の降水活動を調べた.GPCPデータは衛星の赤外及びマイクロ波放射計観測から推定した降水量と地上の雨量計で観測した降水量を組み合わせたものであるが,今年度はGPCPで用いられる観測と測定原理が全く異なるTRMM(熱帯降雨観測衛星)のPR(降雨レーダー)観測から作られた月降水量データを解析して,GPCPの結果と比較した.2つのデータの結果は熱帯海上を除くと,測定原理が異なるにもかかわらず良く一致しており,このことから亜熱帯域では海陸を問わずデータの信頼性は高いと期待できる.従って11年度に示した亜熱帯前線帯の降雨活動の解析結果は海上部分も含めてほぼ信頼できると考えられる. TRMMはPRと共にTMI(マイクロ波放射計),VIRS(可視赤外放射計),LIS(雷観測装置)などを搭載しており,多様なセンサーによる同時観測(マルチセンサー観測)を行うことができる.そこで,TRMMデータを用いて,梅雨前線付近に発生した海上のにんじん状雲の詳細な解析を行った.PRデータにより,これまで観測が困難であった海上のにんじん状雲の内部構造を示し,またVIRSの赤外画像とPR観測の組み合わせにより,背の高い対流雲から対流雲に相対的な上層の風によってかなとこ雲が伸びる様子を示すことができ,マイクロ波放射計観測より雲上部の氷降水粒子の分布や雲周囲の水蒸気場を,LISの観測より雷活動が背の高い対流雲域に集中していることを示すことができた.TRMM衛星の観測データは,熱帯・亜熱帯域の降雨について,グローバルスケールからメソスケールにいたる様々な気象解析に大変有効であり,今後の活用が期待される.
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