亜熱帯循環から熱帯循環への表層・中層水の流入を解明するために、次のとおり研究を実施した。 1. 気象庁および海上保安庁水路部による定線データ(130゚E、137゚E、144゚E、155゚E)を鉛直・水平方向に格子化し、北太平洋西部における北赤道海流域および北赤道反流域の水温、塩分、溶存酸素、渦位、地衡流速度の時系列データセットを構築した。 2. ポテンシャル密度座標を用いて1のデータセットを平均化することにより、北赤道海流、北赤道反流を構成する各主要水塊の密度範囲、空間分布、海水特性についての長期平均的特徴を把握した。とくに、北赤道反流域の北緯5度、200〜300m、ポテンシャル密度26.5σ_θを中心に塩分の鉛直・水平極小が強固に存在することをはじめて明らかにした。この低塩分コアの水は、その塩分、密度の値から判断して、北赤道海流から西岸境界を経て北赤道反流に流入したものと推測される。この水およびその周囲の水の特性分布や、関連する流速場を吟味することにより、亜熱帯循環から熱帯循環への海水流入の解明が進むものと期待される。 3. 東京大学海洋研究所白鳳丸KH-99-1次研究航海により、北赤道海流・北赤道反流域の集中観測を実施し、CTD(水温・塩分・水深計)、XCTD(投棄式CTD)、溶存酸素、栄養塩、フロン等のデータを取得した。この航海では、とくに2の低塩分コアの詳細な構造の把握を重視して測点・採水層を配置した。 平成11年度には、2の低塩分コアに着目した3のデータの解析と、1のデータによる時間変動の解析を進める予定である。
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